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 第123回招待講師による講座 講師:山田哲子氏 2010年7月11日(日) 古楽研究会2階サロン
〜ラテン語入門「古典ラテン詩の世界」〜その韻律と朗読〜

 ラテン語といえばヨーロッパの文化芸術にとって大切な言語には違いないが、その前に多くの言語が立ちはだかっている上に、ハードルは限りなく高いものに思われる。しかもそれを母国語とする国はとうにない。分厚い書物に詰め込まれるだけの言葉なのだろうか?言葉としてラテン語の世界を少しでも実感してみたいという私たちの意図をくんで下さった山田哲子氏によって、わかりやすく楽しい講座を実現して頂いた。山田氏によって紹介された古典ラテン詩の世界は、少ない単語(語尾の格変化で多くの意味を表すので饒舌な感じがない)、言葉によって語られる壮大な物語であった。言葉のリズム感を活かし、しかし単純ではなく、しかも物語に聴く人を引き込む技「レトリック」も駆使したものである。

 講座の構成は、前半に「古典ラテン語とは」「古典ラテン語の発音」「古典ラテン語の文章」、後半は「古典ラテン詩の韻律について」である。

古典ラテン語とは紀元前1世紀から紀元後1世紀くらいまでの古代ローマで使われていた言語である。その発音はローマ・カトリック教会のものとは少し異なっているようだ。前半の締めくくりに古典ラテン語の名文といわれるカエサル『ガリア戦記』(散文)、キケロー『カティリーナ弾劾演説』(散文)、ウェルギリウス『アエネーイス』(韻文・叙事詩)、ホラティウス『歌集』(韻文・叙情詩)を少しずつ朗読して頂く。

 後半はいよいよラテン詩の世界である。ラテン語には長音説(─)と単音節(∪)があり、叙事詩においてはその組み合わせで─∪∪(時に─ ─)という単位を6回繰り返す。しかしこの単位と単語の切れ目は必ずしも一致せず、様々な工夫が施される。ウェルギリウスの『アエネーイス』の冒頭部分を詳しく解説、朗読して頂き、最後に私たちも先生に続いて本を読む生徒のように朗読した。アエネーイスは我が国で言えば「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり…」と、かつて暗唱した平家物語のような存在という。H.パーセルのオペラ「ディドとエネアス」は、この叙事詩を基にネイハム・テイトが台本化したものである。多くの人々が精通する物語だからこそ、一部にスポット当てた翻案が成功したのであろう。 

 今回の講座では、氏が最後に強調されたように、ミサ曲やモテットなどの理解に即役に立つ事はないかも知れないが、ヨーロッパの言語、文化、芸術の基盤としてのラテン語、受け継がれ研究され続けているラテン語の存在の大きさというものは、強く感じることができたのではないだろうか。

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