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★レポート 

7月29〜30日 E.バイアーノ氏 レクチャーコンサートおよびレッスン

 「スカルラッティ音楽祭2007」出演のため来日されたイタリアのチェンバロ奏者、エンリーコ・バイアーノ氏によるレクチャーコンサート、初級者向け公開レッスンおよびマスタークラス(7月29日、30日)が終了。
早々と定員締切りとなる大盛況の二日間だった。
 バイアーノ氏はD.スカルラッティと同じナポリの生まれ、陽気でエネルギッシュなイタリア紳士だ。
  レクチャーコンサートでは研究会所蔵のスコヴロネック作フレミッシュ2段鍵盤とイタリアンの2台を弾き分け、17世紀のナポリで活躍した作曲家についてのお話と素晴らしい演奏を披露。
  続いて行われた公開レッスンとマスタークラスでも、ユーモアを交えた指導で 受講者はもちろん、聴講の参加者たちもすっかり魅了された二日間だった。



レッスン中のエンリーコ・バイアーノ氏

★レポート 「E.バイアーノ氏をお迎えして」

加久間朋子(古楽研究会・代表)

  7月29日〜31日に行われた、E.バイアーノ氏による催しは無事に終了しました。
この催しは、昨年後半にチェンバロ奏者の友人から、2007年はD.スカルラッティ没後250年にあたる事から、「スカルラッティ音楽祭2007」と銘打った催しを行うことが計画されている。そして、これは一ヶ月かけて様々な観点からスカルラッティをはじめ、日本ではあまり知る機会の少ないイタリア・ナポリのルネサンス〜バロック時代の作曲家の作品を取り上げ、日本での知名度は高くはないけれども、すばらしい業績を重ねているイタリアの音楽家達を招き、彼らと共にイタリア在住、勉強を積んだ邦人演奏家や学者が、演奏や講座を行うという企画であると連絡が入りました。そして、その中で最終日に登場する、生粋のナポリ人E.バイアーノ氏によるチェンバロ講座を古楽研究会でもしませんか?という申し出があったのです。
 そこで、研究会では29日にはレクチャーと初級者の為のレッスン、30日はチェンバロ演奏をめざす方と奏者のためのマスタークラス、31日は非公開での当研究会会員向けのレッスンと情報交換の場を設定しました。イタリアの演奏家ではすでに、R.メニケッティ氏との交流がありましたが、彼はピサの生まれで中部イタリアの方、今回のバイアーノ氏は南イタリアの方で、気質の違いなどに興味もありました。
 来日まで、レクチャーに関することや、来日時の打ち合わせ事項などを電子メールでやり取りの後、いよいよ当日を迎えました。ナポリの方ということで想像したとおり、陽気で親切、表情あふれる方。そして繊細さをあわせ持ったすばらしい方でした。この催しの詳細な報告は、受講した方のレポート等をごらんください。
 8月4日にはイタリア文化会館にてソロコンサートが行われ、彼の演奏には多くの聴衆が感銘を受けた様子。この演奏会には当会所蔵の楽器(鍋島先生の愛器であったスコヴォロネック作)を提供。その為、催し以外の日も、ほぼ毎日教室に練習にみえ、その間、演奏へのアプローチを始め、イタリアでのチェンバロの生徒さんの問題、楽器のこと、所蔵の図書に関して多くの情報や事項の交換をしました。このような触れ合いは貴重なことです。当会に不足しているイタリアの楽譜など、チェックをして帰国後に送ってくださると約束してくれました。こちらからナポリへ出向くというツアーも企画されるかもしれませんね。  
   このような演奏家との触れ合いを通して、海外の演奏家のために当研究会ができることが多々あるように感じます。講座を行うための楽器や図書が、このような小さな団体に完備されている事は、バイアーノ氏も驚いていたほどです。

   さらに今年11月には1階に体裁のよいスペースも出来上がる予定ですので、さらに、多彩なゲストをお迎えてして、さまざまな催しを続けていきたいと思っています。
 当日おいでくださいました賛助会員、会友の皆様を始め、会員各位の協力のもと、無事にこの企画が終了したことをここに報告いたします。ありがとうございました。

★レポート 「エンリーコ・バイアーノ氏との esclamazione!な三日間」

(会員)

  ナポリ生まれのチェンバロ奏者、E.バイアーノ氏をオリゴに迎えた三日間の催しが終了しました。私達に鮮烈な印象を残して日本を去られたバイアーノ氏は、今ごろはヴァカンスの真っ最中でしょうか。(「これが終わったらイタリアの田舎で休暇だよ」と言っておられましたから) 
  今回の催しのため数ヶ月前からの準備期間も含め、終わってみれば三日間はあっという間、その全てをここに報告することはできませんが、私なりに心に残った事柄を書くことにしましょう。
 バイアーノ氏との初対面はレクチャーコンサート前日の7月28日。オリゴで翌日弾かれる楽器での練習のため、半蔵門のホテルまでお迎えに出向いた。約束の時間ちょうどにロビーに現れたバイアーノ氏は、パンフレットの写真で思い描いたとおりの快活でエネルギッシュなイタリア紳士だ。教室までの道中、イタリアの音楽事情や教授を務めるパレルモの音楽院の話などを伺う。教室に到着すると早速イタリアンとスコヴロネック作のドュルケンを弾かれ、どちらも大変気に入られたようだ。三階の楽器や図書もお見せすると、「いったいここには何台のチェンバロがあるの?!」と驚かれた。その後、さあ練習!とばかりに楽器に向かわれ、「明日から楽しみにしています」と伝えてこの日はお別れをする。
  翌29日はレクチャーコンサートとチェンバロ初級者向け公開レッスンが行われ、レクチャーのテーマは17世紀ナポリの作曲家。ナポリは17世紀のヨーロッパにおいても芸術活動の盛んな都市であり、特に鍵盤音楽の分野で重要な作曲家が生まれた。伝統的で厳格な対位法を用いたフランドル楽派の後、ジャン・ド・マックやアスカニオ・マイオーネ、ジョヴァンニ・マリア・トラバーチらは革新的な「第二の作法」を取り入れ、ユニークで創造的な実験を試みたのである。初期バロックの天才フレスコバルディに彼らが与えた影響も多大であった。
  バイアーノ氏はマイオーネのトッカータで演奏を開始された。なんと色彩感に溢れ雄弁な音楽だろう!氏はトッカータの開始部分で二つの異なるキャラクターを演奏で示され、どちらが正しいかではなく、どう表現したいかということが重要なのですと付け加えられた。マイオーネ、トラバーチに続く世代で最も重要な作曲家が、グレゴリオ・ストロッツィとジョヴァンニ・サルヴァトーレである。サルヴァトーレのトッカータはナポリの作曲家達が行った和声的実験の良い例であり、旋法の移り変わりが唐突な印象を与える。またドゥレッツェ・エ・リガトゥーレ(協和音と不協和音の連続を意味する)でも同じ手法が取られながら、その和音の連結は驚異的である。アレッサンドロ・スカルラッティの世代になると複雑な和声や対位法ではなく、より明快な語法が用いられるようになった。アレッサンドロのトッカータは音階やアルペッジョの連続、急速なパッセージを駆使した傑作である。(アルペッジョによる和音の色彩を強調するため、この日の調律はミーントンのヴァリエーションをバイアーノ氏が指示された)
  バイアーノ氏はレクチャーの中で、17世紀のイタリア鍵盤曲を演奏するためには、同時代の声楽曲の様式と技法を知ることが必要ですと話された。実際にカスカータ、リバットゥータ等の声楽に由来する装飾の例を示してくださり、「イタリア音楽では常にsingingを忘れずに」という氏の言葉が非常に説得力を持って伝わってきた。そして17世紀の音楽を表現するのにmovingとfireという単語を使われたことも、演奏を聴いてまさに納得したのだった。
  初級者向け公開レッスンでは5人が受講。人前で弾くことに慣れていない初心者にとって大勢の聴講者がいる中で、まして外国の演奏家のレッスンを受けるという事に一大決心をして臨んだ方もいるのでは?緊張の余り硬くなる受講者に対して、バイアーノ氏はユーモアを交えながら、装飾音の弾き方、腕や手首の使い方についても丁寧に指導され、
予定の時間をオーバーしての皆さん大健闘であった。    

  30日はチェンバロ奏者のためのマスタークラス。参加者の中には二日連続で参加の方も多数あり、この日も大盛況。受講の方達は皆夫々によく準備してレッスンに臨まれていたが、バイアーノ氏のアドバイスに反応してどんどん演奏が変化していく人あり、なかなか自分の殻から抜け出せない人ありで、興味深く聴かせていただいた。(自分が弾かない時は気楽なのだ) レクチャーやレッスンを通じてバイアーノ氏がよく使われた言葉の一つが「esclamazione」だ。これはイタリア語で叫びや感情を込めた声、または感情をあらわにすること、といった意味。なるほど確かにバイアーノ氏は演奏も普段の表情もesclamazione。  そしてイタリア音楽を理解する上でのキーワードでもあるようだ。
  最終日は非公開でのオリゴ会員レッスンと、講師陣での討議ならびに情報交換のために時間を割いていただいた。非公開をいいことに演奏に関する基本的な質問なども随分とさせていただいたのだが、熱心に応じてくださり氏の人柄にもますます親しみを感じずにはいられない。

  三日間毎日一緒に食事をしながら親しく触れ合い、音楽以外の話題にも事欠かなかった。「あなたは典型的なナポリタン?」と尋ねると、「おそらく、でもナポリの人間はみんな時間にルーズだけど、私は違う!」と笑ってお答えになった。この三日間(正確にはバイアーノ氏とホテルでの初対面から8月4日にイタリア文化会館で行われた氏のコンサートまでのちょうど一週間)で、私は今までに増してイタリアとイタリア音楽が好きになった。 
Mille grazie,signor Baiano! e Arrivederci a presto.

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