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オリジナル・チェンバロ&フォルテピアノ試奏見学ツアー |
| 古楽器研究会代表 加久間朋子 |
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昨年12月3日(日)に古楽研究会主催/想楽舎のマネージによる博物館見学に、総勢21名で行ってまいりました。 当会では過去2回、ドイツとイタリアにオリジナル楽器に触れるツアーを行ってきましたが、ここ日本で、近年充実した所蔵楽器を揃え、修復においても興味あふれる内容となった浜松市楽器博物館にぜひ行きたいと考えていました 。そして、特別会員であり、楽器研究家の野村満男氏がその博物館の楽器に関するレクチャーを行ったこともあり、試奏可能な状況が生まれました。この試奏可能という事は、我々、演奏家にとって大変重要な事です。眺めるのみでは、その楽器がどのようなニュアンスを持っていたのか謎です。鍵盤や弦は修復されたとしても、楽器本来の響きの持つニュアンスは実際に音を出してみなければ分かりません。そこで、オリゴでは試奏または実際に音をその場で聴くことが重要と考えています。全世界的にオリジナル楽器の試奏不可の風潮の中、このツアーが野村氏のご尽力と館長さんのご好意により実現したのは大変有難い事です。当日は想楽舎のマネージにより、バスをチャーターしての充実したツアーとなりました。以下、その様子をお知らせしましょう。 |
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朝8時の出発にあわせ、新宿西口の集合場所に待機するバスに乗る。後方はサロンが付き、私の希望でもあったトイレ付の大型サロンバスのサロン・シートにゆっくりと座る。全員が集まり、浜松に向け出発。その車中で今回の講師を務めていただく野村氏による、見学の為の事前講座がすぐに始まる。映像と共にということで氏の用意したDVDをバスのプレイヤーに挿入するものの、動かない。では、CDを…ということで交換しようとするがまったく反応しなくなり、取り出すことも不可能。大変残念な始まりとなった。が、参考プリントを元にした氏の話は、早朝からの出発であった為に集中して聞けるかとの心配も無用で、興味深く、あっという間に(とはいえ、3時間あまり)浜松に到着した。この間、もちろん野村氏は終始バス前方に立ったままお話されたわけで、体力、脚力にも舌を巻いた。 博物館前でバスを下車、昼食場所の「八百徳」に向かう。浜松といえばうなぎ。うなぎの老舗であるこの店、昔はそれ程大きくなかったそうであるが、今は大きなビル。 その2階のお座敷で参加者同士の親睦も兼ねうなぎを食す。豪華、とまではいえない「うな重」であったが、私は大変美味しく頂いた。 参加者の自己紹介、歓談の後、目的である博物館内へ移動。15分ほどの自由観覧の後、いよいよ鍵盤楽器のコーナーで、野村氏による解説付「オリジナル楽器試奏見学」が始まる。 ずらっと並んだオリジナル楽器に感動し、感嘆の声があがる。その中、今回の実現に協力いただいた館長さんをはじめ、学芸員の方、修復に携わる方と対面する。短い顔合わせの後、早速、古いものから見て回る。 まず、ヴァージナル(17C初期のものとF.ロッシ=ミラノ1597)。鍵盤がかなり演奏された為であろう、指の接する部分が見事にへこんでいる。 続いてスピネット2台、と四角型のヴァージナル。次にイタリアンに移り蓋内側の絵が印象的な1640年作者不詳フィレンツェの楽器を見た後、 F.マルキオーニ(フィレンツェ)1646年を試奏する。 |
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鍵盤もオリジナルの様で、多少弾きにくさはあるけれども、音の立ち上がりの明確な、引き締まった音色。 初期イタリアの作品のイメージが膨らむ。その楽器の隣に、車中で話題になったフランチョリーニ(偽造・模作) ではと思われる派手な装飾の楽器がある。 そういう楽器を見抜くことの困難さという話も聞いていたので、 例を見ることが出来、興味深かった上に、見事に出来ていると感心もした。 |
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このような経験は楽器に愛情を持って丹念に研究されている野村氏同行の見学会ならではの事だろう。 いよいよ、今回の目玉(博物館の目玉でもある)であるブランシェである。 |
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装飾、脚、響板の絵すべて目を奪われるほど美しい。 鍵盤は後に新しくなったそうだが、 音色は芯のある音で、なおかつ響きが豊かフレンチ風の混ざり合うというよりはしっかりとした印象。 私の楽器もブランシェをモデルにしたチェンバロなので、嬉しい時間であった。 余韻を引きずり、イギリスのメーカー、カークマンの楽器に進む。 この後のフォルテピアノを想像するような木目にニス塗りの楽器。 一段鍵盤のほうから見学。 ペダルが2本あり、右ペダルで蓋の開閉を行う。音量、質感の変化が可能。 続いて2段鍵盤、鍵盤の色が上と下で逆になっている。 これは誰かがこのように変えたようだと言う話。 この楽器には、フレンチの楽器の機構には無いレジスター、リュートストップがついている。 デュルケン作のフレミッシュにも付いていて、このようなレジスターは使いこなすのには その機構からくる難しさがある。その為、重鎮レオンハルトでさえこの機構の使用を断念したという。 |
| しかし、このレジスターを使用することによって、C.P.E.バッハ等が求めた3段階の音量変化が可能となる。野村氏はこの機構がもっと認知され、いまや、 フレンチ2段鍵盤チェンバロがチェンバロの主流となりすぎていることに歯止めをかけるのも必要ではと話された。実際にカークマンの2段鍵盤でレジスターを操作して音量、音質の違いを体感すると、このレジスターの持つ可能性に改めて着眼すべきと痛感した。 |
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そのような気持ちを引きずりクラヴィコードへ移動。薄緑色のこの楽器のつぶやくような響きにうっとり、その後フォルテピアノのコーナーへ。 はね上げ式(ウィーン式)の重要な楽器であるワルターのフォルテピアノは、この日は状態が悪いので、会場には展示していなかった。写真で見ても、楽器の本体がゆがんでいる。チェンバロにも構造によって起こることであるが、よい補修がされ、いつか対面をしたいものである。そこで、同じ機構を持つシュトライヒャーを見学。修 復担当の中山氏が鍵盤とアクション部分を引っ張り出して説明。はね上げ式を実際に確認できた。その後、いくつかそのアクションの楽器を見学。 そして、フォルテピアノを最初に世に送ったB.クリストフォリの河合楽器で制作されたレプリカを試奏。 |
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チェンバロに見える本体の中にエスケープメント付突き上げ式のアクションがあり、当初はチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ(弱い音と強い音が出る大きなチェンバロ)と呼んだということも納得できるような、音色、タッチであった。しかし、通常はじく感覚に慣れている私には打つという指先感覚は難しく感じられた。
続いてイギリス式ダブル・エスケープメントの楽器を数台見学。現代のピアノへの道筋をたどった。 |
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あっという間に時間がたち3時間の見学時間は終了。5時のバス出発に合わせ、慌ただしく、また名残惜しく館を後にする。帰路のバスの中では、たった今見た楽器やそれについての意見、リュートストップの事、会所有の楽器などについての話等、おのおのの席で活発な討議が繰り広げられていたようである。車中で配られた遠州沖のシラスをメインにした「シラス弁当」が配られ、ゆっくり座りながらその味を堪能。途中、小田原で野村氏と私は小田急線利用の為途中下車。ロマンスカーで家路についた。この日は首都高3号線の集中工事に当たった事による渋滞で、新宿10時着は難しく、首都高に入る前の途中駅での解散になったそうであるが、この充実したツアーは全行程を無事終了した。
今回のツアーを終え、試奏のみでなく野村氏による楽器に関する解説が知識、感覚にいかに強い助けになるかを痛感しました。知識はもっていても、演奏家(特に自分自身)は楽器が目の前にあると、鍵盤や音に感覚を奪われがちです。そして、見落とす楽器や構造が常にあります。しかし、今回はその両方を経験できたように思います。 |
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会員レポート
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オリジナル古楽器の試奏は初めてである。わくわくしながら浜松楽器博物館に向かった。地下1階の展示場には数多くの鍵盤楽器が美しく輝いて置かれていた。まず野村先生の説明を聞きながら、手の込んだローズを施したイタリアのヴァージナルやショートオクターヴのあるキーンのスピネットを見る。学芸員の方が分割された鍵盤を実際に弾いて説明してくださった。 最初の試奏はフィレンツェのマルキオーニ。一年前のオリゴ主催オルガン紀行で訪れたピストイアの教会のオルガン鍵盤によく似ている。フレスコバルディのガイアルダを弾いてみた。あめ色の白鍵部分は弾きこまれて中央が僅かにへこんでおり、黒鍵はとても浅い。音は「乾いた」感じがした。輪郭がはっきり聴こえてくる。オールドフィンガリングを試したら弾きやすかった。 こういう楽器でフレスコバルディはトッカータを走るように奏したのだろうか。フレスコバルディが少し身近に感じられてきた。 次はお目当てともいえるブランシェ。装飾の美しさは館内で一番と思われた。全体に金色に輝いており凝った彫刻の猫足スタンド、幾何模様の中に描かれた婦人図、響版の花鳥図や銘の入ったローズなど見とれてしまうような美しさなのだが、底板と人目につかぬ側の面には全く何の手も加えられておらず、両者の落差がおかしかった。 鍵盤は1960年代に作り変えられて新しい。フランソワ・クープランの作品を弾いてみる。鍵盤のタッチや音色の違いを確かめるように試奏して、そのまろやかな音色と薫り立つような響きに心を奪われた。先生方の演奏は少し離れて聴き、楽器から流れ出る美しい音楽に至福のひとときを味わった。 最後に触ったチェンバロはイギリスで18世紀後半に作られたカークマン。2台置いてあったが眼を引くの「しかけ」で両方ともペダルで操作する。一段鍵盤の方はペダルを踏むと蓋の一部が中開きから全開になり音量が上がる。先生が実演して下さったが、瞬時に踏み込まないと効果が出ない。あまり音楽的とは思えない動作を演奏者に要求する。二段鍵盤の方はレジストレーションを二つのペダルで使い分けるようになっていた。上下の鍵盤から全く違う音色が出てくるのは面白かったが使いこなすのは大変そうだ。パーセルの作品はよく合った。装飾も殆どなく機能搭載のカークマンは産業革命を興した国の産物に思われた。 今回のように歴史的楽器を試奏してみると現代のコピー作品よりも一層強くお国振りの違いが感じ取られて興味深い。作品や作曲者に対するイメージも湧いてきて、分かりづらかった楽譜の理解が一歩進むように思う。とても充実した冬の一日だった。 |
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| カークマン(1791年) ペダルによる蓋の開閉アクションの様子 |
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ホーム TOPICS 会の活動
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