楽器エッセイ <何でそんなにたくさんあるのか?!>

OLYMPUS DIGITAL CAMERA OLYMPUS DIGITAL CAMERA OLYMPUS DIGITAL CAMERA

左から順に
・カルマン作チェンバロ(コルマール・ルッカース) 響板の絵
・スコヴロネック作チェンバロ(フレミッシュ/デュルケンモデル)響板の絵
・カルマン作フレミッシュチェンバロ 鍵盤部

古楽研究会 Origo et Practica には、自宅練習貸出用楽器を除いて、全9台のチェンバロ、クラヴィコード、フォルテピアノがあります。それらは、創設者 鍋島元子(1999年没、享年63歳)が生前に毎年演奏会出演や古楽音楽祭などでヨーロッパを尋ねた際に、チェンバロ製作者との交流や工房訪問で製作者の製作ポリシーを識り、構造・音色・弾き心地などを確かめ「この人の楽器なら」との確信を持って、自ら購入したものが主です。また、それまでの演奏家や製作家との縁で購入したものもあります。

では、何でそんなにたくさん必要なのか?チェンバロという楽器を活かし演奏できる作品は、17・18世紀バロック期だけに限らずルネサンス後期から古典派の初期まで、広くは300年余りの永きにわたります(註*)。残された鍵盤作品数は膨大な数で、作曲された時代や国(民族)の違いによって、音楽の特徴(好み)や作曲法が異なります。
それと同様に、今も博物館やコレクションに残されている数々のオリジナルの鍵盤楽器は、その特徴を音として再現してくれる貴重な手掛かりとなります。日本で勉強している私たちに、その特徴を備えたいくつかの代表的なものだけでも体験させる為に、鍋島は、約50年間隔でその時代と国の特徴ある現存モデルのレプリカを揃えました。作品の時代と国に合った楽器で演奏すると、曲の理解が深まると共に、音色から受け取るファンタジ―が演奏表現をさらに広げてくれます。現在チェンバロの演奏会では、当日の演奏曲によって楽器を選び、チラシやプログラムに当日使用楽器を書くことも多くみられるようになりましたが、既に70年代後半、当研究会の発表会では17世紀のイタリアンモデルと18世紀のモデルをそれぞれ違う調律法にして舞台に載せ、初級の出演者も曲によって楽器を使い分けることが当たり前になっていました。今思うと、当時としては何と特別で贅沢なことだったか…!
(註*ここでは、モダンチェンバロや現代曲は除く)

鍋島が亡くなった後、これらの楽器を引き継いで現所在地に移り、研究会活動を継続していますが、建物の1階にあった自動車修理工場跡を2007年に改装、11月末に念願であった演奏スペースをオープンしました。名づけて「Space1F」、そのまんまのネーミングです。
さて…楽器はどれを移動しようか…検討しました。チェンバロは名匠スコヴロネック作と若き名工カルマン作のタイプの異なるフレミッシュ、それにクリスマーネ作のフォルテピアノを置き、さらに2013年秋には名匠シュッツェ作の17世紀イタリアンを3階レッスン室から下ろして加えました。
多くのチェンバロ奏者にもSpace1Fの響きの良い演奏空間で使っていただけるように、そしてまた、一人でも多くのお客様に表現豊かなチェンバロたちを介した演奏を愉しんでいただけるように、と願って。

© 古楽研究会 Origo et Practica All rights reserved